電気と半導体|Week 3

ダイオードとMOSFET

pn接合で電流の向きが変わる理由と、MOSFETで電流を制御する仕組みを見ます。

同じ『電流を制御する』でも、ダイオードとMOSFETの仕組みは違うよ。まず境目の様子を見よう。
回路図タブレットを持ち、学習者を案内する半導体設計者の先生

この週でできるようになること

  • pn接合に空乏層と内蔵電界が生じる理由を説明できる。
  • 順方向と逆方向でダイオードの振る舞いが変わる理由を説明できる。
  • MOSFETの端子とゲート電界の役割を説明できる。
  • 「ゲートへ電流を流して開く」という不正確な表現を修正できる。

まず、具体的な場面から

p型とn型を接する

電子と正孔が境目へ広がって再結合する。

p側を高い電位に

障壁が弱まり、電流が流れやすい。

p側を低い電位に

障壁が強まり、電流が流れにくい。

見えてくること:pn接合の境目には移動キャリアの少ない空乏層ができ、外からかける電圧の向きが障壁を変えます。

pn接合の空乏層左のp型と右のn型の境目に空乏層があり、固定された負電荷と正電荷が残る。電界はn側からp側へ向く。 p型正孔が多い 空乏層− − − │ + + + n型電子が多い 内蔵電界
接合付近で動けるキャリアが減り、固定電荷による電界ができます。

ここで初めて、見えてきた関係を言葉や記号でまとめます。

順方向:障壁が弱まる / 逆方向:障壁が強まる

p側は正孔が多数、n側は電子が多数。空乏層は移動キャリアが少ない領域です。

なぜそうなる?

接触直後、濃度差でキャリアが拡散します。境目には動けないイオンが残り、内蔵電界がさらなる拡散を妨げます。平衡時は拡散と電界による動きが釣り合います。

講義ノートで詳しく読む

元のMarkdownにある仕組み・図・用語を、順番に確認します。

1. pn接合ができると何が起きるか

p型とn型を接触させると、濃度差によりn側の電子がp側へ、p側の正孔がn側へ拡散し、接合付近で再結合します。

その結果、接合付近には移動できないイオン化ドーパントが残ります。

p型             空乏層               n型
正孔が多い   [ - - - | + + + ]   電子が多い
                      ← 内蔵電界

この領域は移動キャリアが少ないため空乏層と呼ばれます。固定電荷が作る電界は、さらなる拡散を妨げます。平衡時には、拡散しようとする効果と電界によるドリフトが釣り合います。

2. 順方向と逆方向

順方向バイアス

p側を高い電位、n側を低い電位にすると、外部電圧が内蔵障壁を弱めます。空乏層が狭くなり、多数キャリアが接合を越えやすくなります。

逆方向バイアス

p側を低い電位、n側を高い電位にすると障壁が強まり、空乏層が広がります。理想的にはほとんど電流が流れませんが、実物では小さな漏れ電流があり、強すぎる逆電圧では降伏が起きます。

ダイオードは完全な機械式スイッチではなく、電流と電圧が非線形に関係する素子です。

3. MOS構造

MOSはMetal–Oxide–Semiconductorの略です。現在のゲート材料は必ずしも金属・単純な酸化膜だけではありませんが、基本概念を表す名称として残っています。

nMOSを単純化すると次の構造です。

             Gate
          ─────────
          絶縁膜(oxide)
Source n+              n+ Drain
      └──── p型基板 ────┘

端子はゲート、ソース、ドレイン、ボディです。論理回路の説明ではボディ接続を省略することがあります。

4. nMOSの動作

ゲートと半導体の間は絶縁されています。ゲートへ正電圧を加えると電界が生じ、表面から正孔を遠ざけ、電子を引き寄せます。しきい値を超えると、ソースとドレインを結ぶn型の反転層、つまりチャネルができます。

ドレイン・ソース間に電圧があれば、チャネルを通じて電流が流れます。

重要なのは、ゲートが定常的な直流電流で開くのではなく、ゲート電圧による電界でチャネルを制御する点です。ただしゲート容量を充放電する瞬間には電流が必要で、実物には漏れもあります。

5. pMOSとの違い

pMOSでは極性が反対になり、ゲートをソースより低くすると正孔のチャネルができます。nMOSとpMOSを相補的に使うのがCMOSです。

6. スイッチと増幅

  • スイッチ:オフ領域と十分オンした領域を利用する。
  • 増幅:入力の小さな変化がドレイン電流の変化になる領域を利用する。

CPU/GPUでは主にスイッチとして膨大な数を組み合わせますが、クロック、電源、入出力などにはアナログ動作も必要です。

例題で確かめる

例題

nMOSのゲート電圧を0 Vから十分高くしたら、ソース・ドレイン間はどう変わる?

  1. ゲートと半導体の間には絶縁膜がある。
  2. 正のゲート電圧が表面へ電子を引き寄せる。
  3. しきい値を超えるとチャネルができ、ドレイン・ソース間に電圧があれば電流が流れる。

答え:電界でチャネルを作り、流れやすさを変えます。しきい値や電圧の値は素子によって異なります。

実習

FalstadのサンプルからDiode I/V Curve、n-MOSFETを開きます。

  1. ダイオードの極性を反転して電流を比較する。
  2. nMOSのゲート電圧を0 Vから徐々に上げ、ドレイン電流を観察する。
  3. 「しきい値を超えた瞬間に抵抗0になるわけではない」ことを記録する。

説明課題

pn接合の順方向バイアスとnMOSのオンは、どちらも電流を制御します。二つの仕組みの違いを3分で説明してください。

練習問題

元ノートの小テストです。まず自分で答えを考え、必要なら下の答えを開いてください。

  1. pn接合付近で自由キャリアが少ない領域を何と呼ぶか。

    答えと考え方を見る

    空乏層。

  2. 順方向バイアスでは空乏層は広がるか、狭くなるか。

    答えと考え方を見る

    狭くなる。

  3. nMOSのゲートと半導体の間には何があるか。

    答えと考え方を見る

    絶縁膜(ゲート絶縁膜)。

  4. nMOSでは何がチャネル形成を制御するか。

    答えと考え方を見る

    ゲート電圧による電界。

  5. MOSFETをスイッチ以外に使う代表例を一つ答えよ。

    答えと考え方を見る

    増幅器。ほかに可変抵抗的な領域を利用する回路も可。