電気と半導体|Week 2

半導体材料

シリコンの中で動く電子と正孔を、n型・p型という言葉につなげます。

『正孔』って、実は電子が抜けた空席のこと。空席が動くように見える理由から考えよう。
回路図タブレットを持ち、学習者を案内する半導体設計者の先生

この週でできるようになること

  • 導体・半導体・絶縁体をエネルギーバンドで比較できる。
  • 電子と正孔がキャリアになることを説明できる。
  • 真性半導体、n型、p型の違いを説明できる。
  • ドーピングが「電子へ電荷を付ける操作」ではないと理解する。

まず、具体的な場面から

シリコンのみ

熱で少数の電子と正孔が対になって生まれる。

リンを少量加える

動ける電子を供給しやすく、n型になる。

ホウ素を少量加える

電子の空席である正孔を作りやすく、p型になる。

見えてくること:加える原子の価電子の数を変えると、動きやすいキャリアの種類を選べます。

ここで初めて、見えてきた関係を言葉や記号でまとめます。

n型:多数キャリアは電子 / p型:多数キャリアは正孔

キャリアは電気を運ぶもの。多数キャリアは、その材料で主に働くキャリアです。ドーピングは少量の異なる元素を加える操作です。

なぜそうなる?

シリコンは外側に4個の電子を持ち、隣の原子と結合します。リンは5個なので余りの電子を供給しやすく、ホウ素は3個なので空席を作りやすくなります。

講義ノートで詳しく読む

元のMarkdownにある仕組み・図・用語を、順番に確認します。

1. シリコン結晶

シリコン原子は外側に4個の価電子を持ち、結晶中では隣の原子と共有結合を作ります。絶対零度に近い理想状態では電子は結合に束縛され、自由に移動しにくい状態です。

温度が上がると、一部の電子が結合を離れて移動できるようになります。電子が抜けた場所を正孔と呼びます。隣の電子がその空席を埋めると、空席が反対方向へ移動したように見えるため、正孔を正のキャリアとして扱えます。

2. エネルギーバンド

孤立した原子には離散的なエネルギー準位があります。多数の原子が結晶を作ると準位が密集し、帯のようになります。

高いエネルギー
┌────────────────┐
│ 伝導帯:電子が移動しやすい │
└────────────────┘
       バンドギャップ
┌────────────────┐
│ 価電子帯:結合した電子     │
└────────────────┘
低いエネルギー
  • 導体:利用可能な状態が連続しており、電子が動きやすい。
  • 半導体:適度なバンドギャップがあり、熱や光などで一部の電子が伝導帯へ移れる。
  • 絶縁体:バンドギャップが大きく、通常条件ではキャリアが生まれにくい。

「半導体だから常に導体と絶縁体のちょうど中間」というより、キャリア数を大きく制御できることが重要です。

3. 真性半導体

意図的な不純物をほとんど含まない半導体を真性半導体といいます。熱で電子・正孔対が生成されるので、電子数と正孔数は等しくなります。

電子が正孔へ戻ることを再結合と呼びます。生成と再結合の釣り合いでキャリア数が決まります。

4. n型とp型

少量の異なる元素を結晶へ加えるドーピングにより、キャリア数を調整します。

n型

シリコンより価電子が1個多いリンなどを加えると、結合に使われにくい電子が供給されます。

  • 多数キャリア:電子
  • 少数キャリア:正孔
  • 結晶全体:ほぼ電気的中性

p型

シリコンより価電子が1個少ないホウ素などを加えると、結合に電子の空席ができます。

  • 多数キャリア:正孔
  • 少数キャリア:電子
  • 結晶全体:ほぼ電気的中性

n型が負に帯電し、p型が正に帯電しているわけではありません。ドーパント原子のイオンと移動キャリアを合わせると、バルク全体はおおむね中性です。

5. ドリフトと拡散

  • ドリフト:電界によってキャリアが動く現象。
  • 拡散:濃度の高い場所から低い場所へキャリアが広がる現象。

電子は負電荷なので電界と反対方向へ動きます。正孔は正のキャリアとして電界方向へ動きます。pn接合では、拡散と電界によるドリフトの釣り合いが重要になります。

例題で確かめる

例題

リンを加えたシリコンについて、多数キャリアと結晶全体の電荷を答えよう。

  1. リンはシリコンより価電子が1個多い。
  2. 余分な電子が動けるので、多数キャリアは電子。
  3. 固定されたイオン化ドーパントも合わせて考える。

答え:n型で、多数キャリアは電子。結晶全体は通常ほぼ電気的中性です。

実習

紙を横に三分割し、導体・半導体・絶縁体の価電子帯、伝導帯、バンドギャップを描いてください。次にn型とp型について、多数キャリア、少数キャリア、ドーパントの例を書きます。

説明課題

「正孔は本当に正の粒子なのか」「n型は負に帯電しているのか」の二つを、誤解している友人へ説明してください。

練習問題

元ノートの小テストです。まず自分で答えを考え、必要なら下の答えを開いてください。

  1. 価電子帯と伝導帯の間を何と呼ぶか。

    答えと考え方を見る

    バンドギャップ。

  2. シリコン中で電子が結合を離れたあとに残る空席を何と呼ぶか。

    答えと考え方を見る

    正孔(ホール)。

  3. n型半導体の多数キャリアは何か。

    答えと考え方を見る

    電子。

  4. p型半導体全体は通常、正に帯電しているか。

    答えと考え方を見る

    いいえ。移動キャリアとイオン化ドーパントを合わせると、全体は通常ほぼ中性。

  5. キャリアが濃度差によって移動する現象を何と呼ぶか。

    答えと考え方を見る

    拡散。