ダイオードとMOSFET
pn接合で電流の向きが変わる理由と、MOSFETで電流を制御する仕組みを見ます。

この週でできるようになること
- pn接合に空乏層と内蔵電界が生じる理由を説明できる。
- 順方向と逆方向でダイオードの振る舞いが変わる理由を説明できる。
- MOSFETの端子とゲート電界の役割を説明できる。
- 「ゲートへ電流を流して開く」という不正確な表現を修正できる。
まず、具体的な場面から
電子と正孔が境目へ広がって再結合する。
障壁が弱まり、電流が流れやすい。
障壁が強まり、電流が流れにくい。
見えてくること:pn接合の境目には移動キャリアの少ない空乏層ができ、外からかける電圧の向きが障壁を変えます。
ここで初めて、見えてきた関係を言葉や記号でまとめます。
p側は正孔が多数、n側は電子が多数。空乏層は移動キャリアが少ない領域です。
なぜそうなる?
接触直後、濃度差でキャリアが拡散します。境目には動けないイオンが残り、内蔵電界がさらなる拡散を妨げます。平衡時は拡散と電界による動きが釣り合います。
講義ノートで詳しく読む
元のMarkdownにある仕組み・図・用語を、順番に確認します。
1. pn接合ができると何が起きるか
p型とn型を接触させると、濃度差によりn側の電子がp側へ、p側の正孔がn側へ拡散し、接合付近で再結合します。
その結果、接合付近には移動できないイオン化ドーパントが残ります。
p型 空乏層 n型
正孔が多い [ - - - | + + + ] 電子が多い
← 内蔵電界
この領域は移動キャリアが少ないため空乏層と呼ばれます。固定電荷が作る電界は、さらなる拡散を妨げます。平衡時には、拡散しようとする効果と電界によるドリフトが釣り合います。
2. 順方向と逆方向
順方向バイアス
p側を高い電位、n側を低い電位にすると、外部電圧が内蔵障壁を弱めます。空乏層が狭くなり、多数キャリアが接合を越えやすくなります。
逆方向バイアス
p側を低い電位、n側を高い電位にすると障壁が強まり、空乏層が広がります。理想的にはほとんど電流が流れませんが、実物では小さな漏れ電流があり、強すぎる逆電圧では降伏が起きます。
ダイオードは完全な機械式スイッチではなく、電流と電圧が非線形に関係する素子です。
3. MOS構造
MOSはMetal–Oxide–Semiconductorの略です。現在のゲート材料は必ずしも金属・単純な酸化膜だけではありませんが、基本概念を表す名称として残っています。
nMOSを単純化すると次の構造です。
Gate
─────────
絶縁膜(oxide)
Source n+ n+ Drain
└──── p型基板 ────┘
端子はゲート、ソース、ドレイン、ボディです。論理回路の説明ではボディ接続を省略することがあります。
4. nMOSの動作
ゲートと半導体の間は絶縁されています。ゲートへ正電圧を加えると電界が生じ、表面から正孔を遠ざけ、電子を引き寄せます。しきい値を超えると、ソースとドレインを結ぶn型の反転層、つまりチャネルができます。
ドレイン・ソース間に電圧があれば、チャネルを通じて電流が流れます。
重要なのは、ゲートが定常的な直流電流で開くのではなく、ゲート電圧による電界でチャネルを制御する点です。ただしゲート容量を充放電する瞬間には電流が必要で、実物には漏れもあります。
5. pMOSとの違い
pMOSでは極性が反対になり、ゲートをソースより低くすると正孔のチャネルができます。nMOSとpMOSを相補的に使うのがCMOSです。
6. スイッチと増幅
- スイッチ:オフ領域と十分オンした領域を利用する。
- 増幅:入力の小さな変化がドレイン電流の変化になる領域を利用する。
CPU/GPUでは主にスイッチとして膨大な数を組み合わせますが、クロック、電源、入出力などにはアナログ動作も必要です。
例題で確かめる
nMOSのゲート電圧を0 Vから十分高くしたら、ソース・ドレイン間はどう変わる?
- ゲートと半導体の間には絶縁膜がある。
- 正のゲート電圧が表面へ電子を引き寄せる。
- しきい値を超えるとチャネルができ、ドレイン・ソース間に電圧があれば電流が流れる。
答え:電界でチャネルを作り、流れやすさを変えます。しきい値や電圧の値は素子によって異なります。
実習
FalstadのサンプルからDiode I/V Curve、n-MOSFETを開きます。
- ダイオードの極性を反転して電流を比較する。
- nMOSのゲート電圧を0 Vから徐々に上げ、ドレイン電流を観察する。
- 「しきい値を超えた瞬間に抵抗0になるわけではない」ことを記録する。
説明課題
pn接合の順方向バイアスとnMOSのオンは、どちらも電流を制御します。二つの仕組みの違いを3分で説明してください。
練習問題
元ノートの小テストです。まず自分で答えを考え、必要なら下の答えを開いてください。
pn接合付近で自由キャリアが少ない領域を何と呼ぶか。
答えと考え方を見る
空乏層。
順方向バイアスでは空乏層は広がるか、狭くなるか。
答えと考え方を見る
狭くなる。
nMOSのゲートと半導体の間には何があるか。
答えと考え方を見る
絶縁膜(ゲート絶縁膜)。
nMOSでは何がチャネル形成を制御するか。
答えと考え方を見る
ゲート電圧による電界。
MOSFETをスイッチ以外に使う代表例を一つ答えよ。
答えと考え方を見る
増幅器。ほかに可変抵抗的な領域を利用する回路も可。