製品・産業と総合課題
これまでの仕組みを製品の中へ置き直し、用途に合ったCPU/GPUの見方を作ります。

この週でできるようになること
- 身近な製品の中で複数種類の半導体が協力する様子を説明できる。
- IDM、ファブレス、ファウンドリ、OSAT、EDA、装置・材料企業を区別できる。
- CPU/GPUの仕様を単一指標でなく目的に沿って読める。
- 12週間の内容を10分で一貫して説明できる。
まず、具体的な場面から
CPUがOSや分岐の多い処理を担当。
GPUや専用演算器が同型処理を担当。
HBM、ネットワーク、電源、冷却も性能を決める。
見えてくること:用途が違えば重視する指標も違います。チップ単体ではなく、製品・ソフトウェア・供給網までつなげて考えます。
ここで初めて、見えてきた関係を言葉や記号でまとめます。
IDMは設計と製造を社内で行い、ファブレスは設計中心、ファウンドリは製造受託、OSATは組立・試験受託です。
なぜそうなる?
小さく逐次依存の強い処理はCPUの低い待ち時間が活きやすく、大量の似た計算はGPUが並列性を活かしやすい。ただし転送やソフトウェアで結果が変わります。
講義ノートで詳しく読む
元のMarkdownにある仕組み・図・用語を、順番に確認します。
1. 製品の中の半導体
PC
- CPU:OS、アプリ、分岐の多い汎用処理。
- GPU:描画、映像、AI、並列計算。
- DRAM:実行中のコードとデータ。
- NAND:SSDの不揮発記憶。
- 電源管理IC・MOSFET:各部へ適切な電圧を供給。
- 通信IC:Wi-Fi、Bluetooth、Ethernetなど。
- センサー:温度、カメラ、指紋など。
スマートフォン
CPU、GPU、AIアクセラレーター、画像信号処理、通信モデムなどをSoCへ統合します。省電力が重要なため、高性能コアと高効率コアを組み合わせる場合があります。
自動車
制御用マイコン、パワー半導体、センサー、通信、先進運転支援用プロセッサなどが使われます。温度、寿命、機能安全、長期供給といった条件が民生PCと異なります。
AIサーバー
CPUがシステム制御とデータ準備を担い、GPUや専用アクセラレーターが行列演算を担当します。GPU単体だけでなく、HBM、ネットワーク、電源、冷却、ソフトウェアが全体性能を決めます。
2. 半導体産業の役割
EDA・設計IP
↓
設計(ファブレス / IDM)
↓
製造(ファウンドリ / IDM)← 装置・材料
↓
組立・検査(OSAT / IDM)
↓
電子機器・クラウド・自動車など
- IDM:設計と製造を社内で行う。
- ファブレス:設計を中心に行い、製造を委託。
- ファウンドリ:他社設計の製造を受託。
- OSAT:後工程の組立・パッケージ・試験を受託。
- EDA:設計、検証、物理実装を支援するツール。
- IPベンダー:CPUコア、インターフェースなど再利用可能な設計を提供。
- 装置・材料:露光、成膜、エッチング、検査、ウェハー、ガス、薬品など。
一社だけで先端CPU/GPUを完成できるわけではなく、国際的な専門分業で成り立ちます。
3. CPU仕様の読み方
確認する順序:
- 目的のソフトウェアとISA互換性。
- 単一thread性能が重要か、並列性能が重要か。
- 物理コア数とハードウェアthread数。
- 世代、マイクロアーキテクチャ、クロック、電力枠。
- キャッシュと対応メモリ。
- 実際の対象ワークロードによるベンチマーク。
GHz×コア数だけで比較しません。ベンチマークは測定条件、電力設定、冷却、ソフトウェアバージョンも確認します。
4. GPU仕様の読み方
確認する順序:
- 用途:描画、動画、AI、科学計算など。
- 対応ソフトウェア、API、ライブラリ。
- VRAM容量と帯域。
- 対象精度での演算性能。
- 消費電力と冷却。
- CPU・メモリ・接続を含むシステム全体。
- 実ワークロードのベンチマーク。
「コア数」はベンダー、世代、演算器種別が違うと比較しにくいため、同じ条件の実測を優先します。
5. CPUとGPUの判断フロー
処理を多数の独立要素へ分けられるか?
├─ いいえ → CPUが中心
└─ はい
├─ 同じ演算が多いか?
│ ├─ いいえ → CPUまたは別アクセラレーターを検討
│ └─ はい
│ ├─ 十分大きな問題か?
│ │ ├─ いいえ → 起動・転送コストからCPUの可能性
│ │ └─ はい → GPU候補
│ └─ メモリアクセスと分岐を整理できるか確認
例題で確かめる
小さく逐次依存の強い探索と、大きな画像の同じフィルター処理。どちらをCPU/GPU候補にする?
- 探索は前の結果を待つので、独立した仕事へ分けにくい。
- 画像フィルターは多くの画素へ似た演算を適用できる。
- データ転送と起動時間も含めて実測する。
答え:探索はCPUが一般に有利。十分大きな画像のフィルター処理はGPU候補です。
総合課題
10分の説明資料を6枚で作ります。
Slide 1:半導体とは何か
- シリコン、キャリア、ドーピング。
- 電気の流れを制御できることが重要。
Slide 2:MOSFETから論理回路へ
- nMOS、pMOS、CMOSインバーター。
- 論理ゲート、加算器、レジスタ。
Slide 3:CPUはどう命令を実行するか
- ALU、レジスタ、PC、メモリ。
- IF、ID、EX、MEM、WB。
Slide 4:CPUをどう高速化するか
- パイプライン、キャッシュ、分岐予測、OoO、マルチコア。
- レイテンシー重視。
Slide 5:GPUはなぜ大量計算に強いか
- thread、warp、block、SM。
- SIMT、高帯域、メモリ、分岐ダイバージェンス。
- スループット重視。
Slide 6:製造・用途・結論
- 前工程、パッケージ、電力・歩留まり。
- CPUとGPUが協調する具体例。
- 単一指標で性能を判断しない。
最終口頭試問
資料を見ず、次の三問へ答えます。
- なぜCPUだけですべての計算を行わず、GPUを併用するのか。
- MOSFETがどのようにCPUの命令実行へつながるのか。
- コア数、クロック、キャッシュ、帯域、消費電力をどう見ればよいか。
評価基準:
| 観点 | 0 | 1 | 2 | 3 |
|---|---|---|---|---|
| 正確さ | 大きな誤り | 一部正しい | 概ね正しい | 例外も含め正確 |
| 因果関係 | 用語の羅列 | 一部つながる | 始点から終点までつながる | トレードオフも説明 |
| 図 | なし | 不完全 | 正しい | 図が説明を助ける |
| 具体例 | なし | 1例 | 適切な複数例 | CPU/GPU両方を比較 |
合計12点中9点以上を修了基準とします。
練習問題
元ノートの小テストです。まず自分で答えを考え、必要なら下の答えを開いてください。
設計を中心に行い製造を委託する企業形態は何か。
答えと考え方を見る
ファブレス。
他社設計のウェハー製造を受託する企業形態は何か。
答えと考え方を見る
ファウンドリ。
AIサーバーの性能がGPU単体だけで決まらない理由を二つ挙げよ。
答えと考え方を見る
例:HBM容量・帯域、CPU側の準備、GPU間ネットワーク、ストレージ、電源、冷却、ソフトウェア最適化が全体性能を制限するため。
CPU/GPUのコア数をベンダー横断で直接比較しにくい理由は何か。
答えと考え方を見る
ベンダーや世代で「コア」の構造、実行幅、機能、クロックが異なり、同じ仕事量を表さないため。
逐次依存が強く小規模な処理は、CPUとGPUのどちらが一般に有利か。その理由も答えよ。
答えと考え方を見る
一般にCPU。並列分割しにくく、GPU起動・転送コストを回収できず、CPUの低レイテンシー制御が有利だから。
次の学習分岐
- CPU設計:Nand2Tetrisを完走し、RISC-V、Verilog、FPGAへ進む。
- GPU計算:Python/C++、CUDAまたは対応する並列API、profilingへ進む。
- 半導体デバイス:MOS電気特性、デバイス方程式、プロセス、TCADへ進む。
- AIハードウェア:行列計算、量子化、メモリ階層、分散学習へ進む。
- 産業分析:企業の役割、設備投資、需給、技術ロードマップを継続調査する。