CPU/GPUの製造
設計からウェハー、パッケージ、試験までを一続きで見ます。

この週でできるようになること
- 設計からパッケージ・最終試験までの順序を説明できる。
- リソグラフィ、成膜、エッチング、ドーピング、配線の役割を区別できる。
- ダイサイズと歩留まり、電力と発熱の関係を説明できる。
- chipletと先端パッケージが使われる理由を説明できる。
まず、具体的な場面から
機能・タイミング・電力を確かめる。
成膜、露光、エッチングなどを繰り返す。
ダイを切り分け、接続し、良品を選ぶ。
見えてくること:設計した回路を多層の物理構造へ写し、電力・熱・欠陥まで管理して初めて使えるチップになります。
ここで初めて、見えてきた関係を言葉や記号でまとめます。
ダイは切り分けたチップ、歩留まりは良品割合。αは切替頻度、Cは充放電容量、Vは電源電圧、fは周波数です。
なぜそうなる?
大きなダイはウェハーから取れる個数が減り、欠陥を含む確率も上がりやすい。電圧を上げると動的電力はおおむね二乗で増え、熱設計も厳しくなります。
講義ノートで詳しく読む
元のMarkdownにある仕組み・図・用語を、順番に確認します。
1. 設計から製品まで
要求・アーキテクチャ
↓ RTL設計・検証
論理合成・配置配線・物理検証
↓ mask data
ウェハー前工程
↓ wafer test
ダイシング
↓
パッケージ組立
↓ final test / binning
製品へ搭載
CPU/GPUの設計は、回路を考えるだけでなく、機能検証、タイミング、消費電力、配線、製造ルールなどを満たす必要があります。
2. 前工程
シリコンウェハー上で次を何度も繰り返し、トランジスタと多層配線を作ります。
- 成膜:絶縁膜、半導体膜、金属膜などを形成。
- リソグラフィ:感光材へ光でパターンを転写。
- エッチング:不要な部分を除去。
- イオン注入:局所的に不純物を導入。
- 熱処理:結晶損傷の回復やドーパント活性化など。
- CMP:次の層を作れるよう表面を平坦化。
- メタライゼーション:トランジスタ間を多層配線で接続。
- 洗浄・計測・検査:汚染と欠陥を抑え、工程を制御。
微細なパターンを一回印刷して終わりではありません。各層を高精度に位置合わせしながら多数回繰り返します。
3. 「プロセスノード」の注意
現在の「数nm」という世代名は、トランジスタの単一の寸法をそのまま示すとは限りません。密度、性能、電力、設計規則を含む技術世代・ブランド名として扱う必要があります。
異なる企業の同じ数字を、数字だけで直接比較しないでください。
4. 歩留まりとダイサイズ
ウェハーには多数のダイを作ります。欠陥がランダムに存在すると仮定すれば、一般に面積が大きいダイほど欠陥を含む確率が上がります。
良品数 = ウェハー上のダイ数 × 歩留まり
大きなGPUは演算器やキャッシュを多く搭載できますが、1枚のウェハーから取れる個数が減り、歩留まり面でも不利になり得ます。
一部の演算器に欠陥があるダイを、機能を無効化して下位製品として利用することもあります。試験結果で動作周波数や機能別に分類することをbinningと呼びます。
5. 電力と発熱
CMOSの動的電力の傾向:
P_dynamic ≈ α C V² f
- 切替が多いほど増える。
- 容量が大きいほど増える。
- 電圧は二乗で影響する。
- 周波数を上げると増える。
さらに漏れ電力があります。高温になると漏れが増え、それがさらに発熱を増やす場合があります。冷却と電力供給はCPU/GPU性能の一部です。
温度・電力上限へ達すると、周波数や電圧を下げるthrottlingが起きる場合があります。
6. パッケージ
パッケージはダイを守る箱だけではありません。
- 電力を供給する。
- 多数の信号を基板へ接続する。
- 熱を外へ逃がす。
- 複数ダイやメモリを高密度に接続する。
高性能GPUでは広いメモリ帯域が必要で、パッケージ内または近傍へ高帯域メモリを配置する技術が重要です。
7. chiplet
一枚の巨大ダイへ全機能を入れる代わりに、複数の小さなダイへ分けてパッケージ内で接続します。
利点:
- 小さいダイに分け、歩留まりを改善しやすい。
- 機能に応じて異なる製造技術を組み合わせられる。
- 設計資産を再利用しやすい。
課題:
- ダイ間通信の遅延と電力。
- パッケージ・接続・検査の複雑化。
- メモリ一貫性や熱設計。
例題で確かめる
ほかの条件を固定し、電源電圧だけ半分にすると動的電力の式では何倍?
- 式の電圧部分はV²。
- 新しい電圧はV/2なので、(V/2)² = V²/4。
答え:単純な式では1/4倍。実際には速度、漏れ電力なども変わり得ます。
実習
次の架空案を比較します。
| 案 | 構成 | 性能 | 電力 | 面積・歩留まり | パッケージ | コスト |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 大型モノリシックGPU | |||||
| B | 4個のcompute chiplet | |||||
| C | 小型内蔵GPU |
正解を一つに決めるのではなく、用途がゲームPC、ノートPC、AIサーバーの場合で選択が変わる理由を書いてください。
説明課題
「微細化すれば、周波数を上げても消費電力の心配はなくなる」という主張を訂正してください。
練習問題
元ノートの小テストです。まず自分で答えを考え、必要なら下の答えを開いてください。
光で回路パターンを転写する工程は何か。
答えと考え方を見る
リソグラフィ(フォトリソグラフィ)。
表面を平坦化する工程の略称は何か。
答えと考え方を見る
CMP。
一般にダイ面積が大きいと歩留まり面で不利になるのはなぜか。
答えと考え方を見る
面積が広いほどランダム欠陥を一つ以上含む確率が一般に上がり、1枚のウェハーから取れる個数も減るため。
動的電力の式で電圧は何乗で影響するか。
答えと考え方を見る
二乗。
chiplet化の利点と課題を一つずつ答えよ。
答えと考え方を見る
利点:小ダイ化による歩留まり改善や異種プロセス混載。課題:ダイ間通信の遅延・電力、パッケージ・検査・熱設計の複雑化。